Yo’s song(2/3)

 稲刈りに忙しかったので、ひとまず窓は閉めておくようにした。家の中では放し飼い。木でできた大きなたらいの淵に柱を立てて、枝を2本渡して止まり木にしておき、だいたいはそこにいた。トイレの横の窓からは田んぼも見えるので、そこから僕らを呼ぶこともあった。太陽も浴びた方がいいと、外へも出すが、その時はカゴに入れておくことにした。この頃から導入したカゴだったが、不思議と嫌がらなかった。むしろ、外行くけど入る?と聞けば、自らカゴに入っていった。そうはいっても、野良仕事が続くと、たいがい日中は家でひとり(一羽)で過ごす。夕方帰れば家中が糞だらけ。築150年を超える古民家も、ヒヨドリ一羽で崩壊するのではと思った。寝室、事務所、台所を締めるようにして、ようちゃんのルーティンもなんとなく決まってきた。

 夜は。最初はとまり木のところで寝かせたが、本能なのか、より高いところを求めて、電気の傘の上で寝るようになった。日が暮れたら明かりを消して、と思っていたが、それもだんだんルーズになり、僕らが起きていれば、12時でも1持でも付き合うようになってしまった。夜はいっしょに過ごす時間で、僕らはそれを楽しみにしていた。ヒヨドリという鳥は、元来懐きやすい鳥らしい。インターネット情報では、平安時代には貴族に飼われたと。(あくまでインターネット情報。)でも、確かに人に懐いた。家にいる間、どこへ行ってもついて来た。トイレに立てばついて来る。ドアの外に締め出せばわめき、出てくると肩に乗る。水浴びが好きで、洗面所に立って蛇口をひねると飛び込んでくる。ひげ剃りや歯磨きをしている間も、肩に乗ってずっと観察したり、じゃまをしたりしてくる。そして、お風呂。入るの?と聞けば、入ってきて。湯船に浸かっていれば、淵をぴょんぴょんと回りながら、中へ飛び込もうとした。そしてときどき、飛び込んだ。ソファーに座れば膝の上、畳の上に寝転んでうとうととしていれば、体の上を歩き回って手や足の指を噛み、飽きればそのままお腹の上で寝てしまった。次第に自分のペースができてくると、夜は8時半には、暗い場所を探して、自ら寝に行くようになった。場所は電気の傘から、洗濯物干しの上になっていた。朝は夏場は5時半に起きて、ふすまの隙間から侵入し、枕元まで毎日起こしに来た。

 一度、お風呂にお湯を入れながらその場を離れたら、蓋の下へ入り込んで出られず、溺れていたのをなんとか気づいて助かったことがあった。電気の紐に羽根が絡まったこともあったし、糸を飲みこんで舌に巻き付いてしまったこともあった。家の中も注意が必要だった。そう、夜寝ている時に、家具の裏に落ちて出られないこともあった。そんなことが度々あるので、声に耳を傾け、例え僕らが寝ている時でも、異変があれば気づけるようになっていた。

 (2021年)5月に換羽した。最初、頭の毛が突然剥げだして、あれ、病気なの?なんか悪いもの食べた?と心配したが、どうやら生え替わりの時期だったらしい。2~3週間ほどかかったと思うが、やがて、ふさふさの毛が生えそろった。それからは、ビュンビュンと飛ぶ量やスピードが増したようで、顔の横をかすめていったりすると、こちらがよろめいた。

 仕事がちらほらと再開し、僕らの遠方への移動の機会が、少しずつ増えて来た。初めて行ったのは(2020年)12月の横浜。カゴに入れて、夜は車で寝かせて。2~3日カゴの中で過ごす初めての経験で、心配したが、無事に帰ってこれたので、これでツアーもいけると思った。(2021年)5月に福島、7月には能登へ。暑い時期に車に置いていかれないので気を使ったが、行った先で、飛ばしてやったり、水浴びをさせてやったりできたので、少しずつ可能性が広がった。どこでも人気者になった。8月、9月と、急用で横浜へ行き来した。移動が増え、こちらの都合で窮屈な思いをさせるのがかわいそうだった。でも、帰ってくれば、うちでの放し飼い生活を伸び伸びと、気に入ってると思っていた。

(2021/9/22記)

 

>>Yo’s Song (1/3)

>>Yo’s Song (3/3)

 

About the author

Choji シンガー・ソングライター

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial