まるで地域行事のように。
「地域芸能」というものが失われる時期というのはある程度共通していて、今から50年ほど前に、多くの地域で申し合わせたように終えているのです。「この原因はなんだと思いますか?」とよく質問するのですが、つまり。テレビの普及と重なるわけです。ここからエンターテイメントはテレビ中心のものとなります。時は経ってメディア媒体は変わったものの、地域からかけ離れたところにエンターテイメントのメインストリームを求めるのはあれから50年、おおよそ変わらないところです。
さて、僕が都会から田舎へ向かうのは、エンターテイメントにおける“一種のあこがれ”でもあって。メディアに見るエンターテイメントの反対側に、地域固有のシーンを求めたのであります。ただ実際は・・・。無形文化財に指定されたものだけが額縁の中に飾られ、エンターテイメントというのは結局、人を呼べるものを都会のシーンに倣ってするのが、おおまかに見て今の地方の現状です。
そんな中、毎年訪ねている地域の人たちと、ささやかに形にしているのが僕の通年のライブでもあるわけです。小田原の梅まつりに合わせた「春待ちコンサート」は一年の始まりのライブ。みかんもぎに集った農家柏木家で、6年目の開催。
もともと、神奈川野菜を横浜に住む人たちに届ける野菜売りの三好さんを通じて、みかん収穫のお手伝いに通っていた柏木家が、2月の曽我梅まつりに合わせ、BBQに招待してくれたことに始まります。生産者と消費者の集いというのは、三好さんが折々に機会を作っていたものですが、長年通ううちに、自然とコンサートになったのだと思っています。
当の三好さんは、民話の語りをします。元劇団員。野菜売り“という役”で、地に根差した生き方を演じてみせてきた半生。今再び演劇人として表現できればという思いのようです。
そしてライブ。土地に訪れる春の兆し、そしてにぎわい。そんなテーマで歌います。
そして親戚の集まりのような交流会。差し入れのお酒と共に。これも地域を訪ねての僕のコンサートの定番ですが、終わらない時間であり、いつでも飲み過ぎるのは仕方ありません。
そんな心地よいひととき。またみなさんよろしくねとおひらき。次は西会津かな。今年も各地でこういった集い、そこに寄り添う歌。そんな機会を重ねていきたいと思っています。